10円玉を5枚並べると、
「10、20、30、40、50」
ちゃんと数えられる。
そこで50円玉と10円玉を1枚ずつ置いて、「じゃあ、これはいくら?」と聞いてみると、急に手が止まる。
50円玉が分からないのかなと思って、「これは何円?」と聞けば、「50円」と答えられる。
「あれ? 分かってるのに、なんでだろう」
お金の練習をしていると、こんな場面があります。
50円玉を見て「50円」と答えることと、50円に10円を足して「60円」と答えること。大人にはひと続きに見えますが、子どもにとっては別々のことです。
ほかにも、硬貨を見分けたり、10円ずつ数えたり、違う硬貨を合わせたり。
「お金を数える」の中には、思っているよりいろいろなことが入っています。
だから、何度やっても同じところで止まるときは、もう少し簡単な問題に戻してみます。
すると、「ここまでは分かっていたんだ」と気づくことがあります。
「全部でいくら?」だけでは分からない
お財布から硬貨を何枚か出して、
「全部でいくら?」
答えられればいいのですが、答えられなかったときが困ります。
硬貨の種類が分からなかったのか。それとも、10円ずつ数えるところで迷ったのか。違う硬貨が混ざったから分からなくなったのか。
これでは、まだよく分かりません。
テーブルに置く硬貨を減らしてみます。
10円玉、50円玉、100円玉を1枚ずつ。
「10円玉はどれ?」
すぐ選べる。
50円玉も分かる。
今度は10円玉だけを3枚置くと、これも30円まで数えられました。
では、50円玉と10円玉を1枚ずつ。
ここで止まった。
そうなると、少なくとも「硬貨がまったく分からない」わけではなさそうです。
50円玉も10円玉も知っている。でも、この2つが一緒になると難しい。
これなら、次に何を確かめればいいのかが少し見えてきます。
「10円玉はどれ?」で迷うなら、数えるのはあと
10円玉を出してもらおうとしたら、50円玉を持ってきた。
「こっちが10円だよ」と教えて、もう一度やっても、やっぱり迷う。
この段階では、まだ「全部でいくら?」には進みません。
硬貨は、大きいものほど金額も大きいわけではありません。10円玉より50円玉のほうが小さく、5円玉と50円玉にはどちらも穴があります。
まずはテーブルに何種類か置いて、「10円玉だけこっちに集めよう」と仲間分け。
最初は「茶色いのを探そう」から始めます。
10円玉を見つけたら10円玉の場所へ。100円玉は100円玉の場所へ。
何度か触っているうちに、色や大きさ、穴の有無も手がかりになってきます。
計算は、そのあとです。
「1、2、3。3枚!」なら、別のところを見てみる
10円玉を3枚置いて「いくら?」と聞いたら、
「1、2、3。3枚!」
答えは30円ではありませんが、よく見ると3枚を正しく数えています。
そこで「違うよ、30円」と直すだけではなく、10円玉を1枚ずつ横へ動かします。
1枚で10円、2枚で20円、3枚で30円。
ここでは「数えられない」というより、枚数と金額がまだ結びついていないと考えたほうが、やることが分かりやすくなります。
10円玉で慣れてきたら、50円玉だけでも同じように動かします。
50円玉が3枚なら150円。
途中で「3枚」と答えたら、また硬貨を動かしながら金額を数えます。
この練習では、ほかの硬貨はまだ出しません。
50円玉が入ると止まるなら、50円から始める
10円玉だけなら数えられるのに、50円玉が入った途端に止まる。
それなら、50円玉と10円玉だけを残します。
50円玉を置いて「50円」。その横に10円玉を置いて「60円」。
慣れてきたら10円玉をもう1枚足して70円。
やっていることは10円ずつ増やすことですが、10円から始めるのと、50円から始めるのでは少し違います。
ここで迷っていたなら、50円玉を覚え直すより「50円の続き」を一緒に数えるほうが合っています。
たとえば50円玉の横に10円玉を1枚ずつ置きながら、60円、70円、80円。
最初は硬貨を少なくして、50円のあとに金額がどう増えていくのかを見せます。
10円玉5枚と50円玉1枚を交換してみる
10円玉を5枚並べます。
数えていくと50円。
その横に50円玉を1枚置きます。
片方は5枚、もう片方は1枚です。
「同じ50円だよ」と言われても、見た目はまるで違います。
ここは紙に、
10+10+10+10+10=50
と書くより、硬貨をそのまま使えます。
10円玉を5枚数えたら、それを50円玉1枚と交換。
また10円玉5枚に戻して、もう一度交換。
「5枚あったのに1枚になった。でも50円のまま」
違う種類の硬貨を一緒に数える前に、この「同じ金額に交換できる」が分かると、お金の見え方が少し変わってきます。
昨日できたのに、今日は止まることもある
昨日は50円と10円で60円と答えられたのに、今日は同じところで止まる。
そんな日もあります。
「昨日できたのに」と同じ問題を繰り返すより、今日はどこまでならできるのかを少しだけ確かめます。
10円玉は数えられる。50円玉も分かる。でも、2つを合わせるところで止まった。
それなら今日は、50円+10円だけで終わります。
昨日できたかどうかより、今日どこで手が止まったか。そのほうが、今やることを決める手がかりになります。
「数えられる」と「自分で出せる」は少し違う
机の上にある10円玉3枚を見て「30円」と答えられるようになったら、今度は向きを変えてみます。
お菓子に「30円」と値札をつけて、
「30円ください」
今度は自分で硬貨を選びます。
10円玉を3枚出せたら、ちゃんと30円を作れています。
ところが、目の前のお金は数えられるのに、「60円作って」と言われると手が止まることがあります。
これは、さっきまでとは別の難しさです。
あるものを数えるときは、目の前の硬貨を順番に追えば答えにたどり着けます。でも「60円を作る」となると、どの硬貨を使うか自分で考えなくてはいけません。
50円玉と10円玉でもいいし、10円玉6枚でも60円です。
お買い物ごっこをすると、「数えられるようになったから、もうお金は分かった」と思っていたところから、もう一段違う様子が見えることがあります。
実際の買い物では、毎回問題にする必要はありません。
子どもがお金を見ているときに、「これ100円だね」と一緒に見るくらいでも、机の上で練習していた硬貨が生活の中のお金につながっていきます。
手が止まった場所から、次にやることを決める
どこで手が止まったかが分かれば、次にやることも変わります。
10円玉を選べないなら、まず硬貨を見分けるところから。
3枚と30円がつながらないなら、10円玉を動かしながら数える。
50円+10円で止まるなら、50円から10円ずつ増やしてみる。
「60円作って」で迷うなら、同じ60円を何通りか並べてみる。
「お金の練習をしなくちゃ」と大きく考えなくても、その日に見るところは案外ひとつです。
本物の硬貨は、色や大きさだけでなく、重さや手触りも手がかりになります。小さなお子さんと使う場合は、誤飲などがないよう大人と一緒に扱ってください。
まとめ|「何円?」で止まった、その少し前を見る
50円玉と10円玉を見て、答えが出てこない。
それだけを見ると、「まだお金が分かっていないのかな」と思います。
でも、少し戻ってみると、
10円玉は選べる。
10円玉だけなら数えられる。
50円玉も分かる。
そこまでできていることもあります。
だったら、次は50円と10円を並べてみる。
まずは60円。
今日はそこまで。
お金の数え方で迷ったときは、できなかった問題を何度も繰り返すより、その少し前を見てみます。
子どもが普通に答えられたところと、手が止まったところ。
その間に、今やることが隠れています。


