「友達と遊ぶのは好きだけど、みんなと同じペースで授業を受けられるかな」
「支援級のほうが合っていそう。でも、勉強が遅れたり、友達と過ごす時間が減ったりしないだろうか」
小学校への入学や進級を前に、支援級と通常級のどちらがいいのか迷うことがあります。
支援級なら、一人ひとりに合わせた学習ができそう。通常級なら、同じ年齢の友達と一緒に学べる。
そんなイメージはあっても、実際の学校生活がどう違うのかは、なかなか想像しにくいですよね。
特に知っておきたいのは、同じ支援級でも、学校によって授業の進め方や通常級との交流の仕方が違うということです。
支援級か通常級かという名前だけで比べるより、授業中はどう過ごすのか。困ったときにどんな助けを受けられるのか。
お子さんがその学校で一日を過ごす様子を思い浮かべながら考えてみましょう。
支援級と通常級は何が違う?
支援級と呼ばれることの多い「特別支援学級」は、障害のある子どもが、それぞれの学習面や生活面の困難に応じた指導を受けるための学級です。
一方、通常級では、基本的に学年ごとの教育課程に沿って、クラス全体で授業を進めます。
公立小学校では、主に次のような違いがあります。
| 比較すること | 支援級 | 通常級 |
|---|---|---|
| クラスの人数 | 1学級8人が標準 | 小学校は1学級35人が標準 |
| 授業の進め方 | 少人数で、子どもの状況に応じて進め方や方法を調整する | 学年の学習内容に沿った一斉授業が中心 |
| 学習内容 | 必要に応じて特別の教育課程を編成できる | 学年ごとの教育課程が基本 |
| 子どもへの支援 | 一人ひとりの教育的ニーズに応じた指導を行う | 通常級でも必要に応じた配慮や支援を受けられる |
| 友達との関わり | 支援級で学びながら、通常級との交流や共同学習を行うことがある | 在籍する学級を中心に学校生活を送る |
※人数は学級編制の標準です。実際の人数や教員配置、支援の方法は学校や自治体によって異なります。
違いが分かりやすいのは、授業中の様子です。

例えば、算数の授業で、
「教科書を開いて、問題を3問解きましょう」
と先生が説明したとします。
通常級では、クラス全体への説明を聞いて、それぞれが問題に取り組みます。途中で分からなくなったときには、先生に質問したり、必要な支援を受けたりします。
支援級では、その子の理解に合わせて、問題数や提示方法、進め方を調整することがあります。
最初の1問だけ先生と確認してから次へ進む。具体物を使って確かめる。書く量を減らして考えることに集中する。
そんな進め方も考えられます。
ただし、支援級なら必ず一対一で教えてもらえるわけではありません。
少人数でも、違う学年や異なる学習内容の子どもたちが同じ教室で学んでいることがあります。
支援級の特徴と、知っておきたいこと
学習内容や進め方を調整できる
支援級の大きな特徴のひとつは、子どもの状況に応じて、学ぶ内容や方法を調整できることです。
例えば、小学3年生でも、繰り上がりのある足し算をもう一度練習したほうが理解が深まりそうなら、その内容を取り入れることがあります。
文字を書くことに時間がかかる子なら、書く量や答え方を工夫することも考えられます。
ただ、支援級に在籍している子が、みんな学年より簡単な内容を勉強するわけではありません。
支援級には、知的障害特別支援学級や、自閉症・情緒障害特別支援学級などがあり、学級の種類や子どもの状況によって教育課程の組み方も異なります。
学年相当の内容を中心に学ぶこともあれば、別の学年の内容や、特別支援学校の学習指導要領を参考にした内容を取り入れることもあります。
見学するときは、
「何年生の勉強をしますか?」
だけでなく、
「実際にどんな教材を使っていますか?」
「一人ひとり違う内容を勉強するとき、授業はどんなふうに進みますか?」
と聞いてみると、学習の様子を想像しやすくなります。
勉強以外の困りごとも学習の対象になる
授業中に分からないことがあっても、うまく先生に伝えられない。
予定が急に変わると、次に何をすればいいのか分からなくなる。
学校生活では、教科の勉強以外にも難しい場面があります。
支援級では、こうした学習面・生活面の困難に応じて、「自立活動」の考え方を取り入れた指導を行います。
例えば、困ったときに助けを求める方法を練習したり、気持ちを落ち着ける方法を一緒に探したり。
必要な内容は子どもによって違います。
学校生活で本人が困っていることを、学ぶ内容として扱えるのも支援級の特徴です。
少人数でも、必ず落ち着けるとは限らない
「支援級なら人数が少ないから、静かに勉強できそう」
そう思うこともありますよね。
ただ、実際の教室の過ごしやすさは、人数だけでは決まりません。
複数の学年が同じ教室で過ごしていたり、それぞれが違う課題に取り組んでいたりすることもあります。
静かな環境を必要とする子にとっては、人数よりも、教室の音や人の動き、活動の切り替わりが気になる場合もあります。
一人ひとりに合わせた学習を行うからこそ、同じ学年の友達とは授業の進度や内容が異なることもあります。
「少人数だから合いそう」だけではなく、実際にどんな一日を過ごすのかまで見ておきたいところです。
通常級の特徴と、知っておきたいこと
同じ学年の友達と一緒に授業を受ける
通常級では、同じ学年の子どもたちが、基本的に共通の学習内容に取り組みます。
友達の発言を聞いて新しい考え方を知ったり、グループで相談しながら課題を進めたりする機会があります。
周りの子の様子を見ながら行動するのが得意な子や、友達と一緒に取り組むことが意欲につながる子には、こうした環境が合う場合があります。
一方で、クラス全体で授業が進むため、説明を聞き取れなかったり、問題を解くのに時間がかかったりすると、次の活動が始まってしまうこともあります。
友達と同じ内容を学べる良さがある反面、授業の速さや集団の大きさが負担になる子もいます。
通常級でも配慮や支援は受けられる
「通常級に入ったら、みんなと同じようにできなければいけない」
そんなふうに感じることもあるかもしれません。
でも、通常級にも特別な教育的支援を必要とする子どもが在籍しています。
例えば、
- 口頭の説明だけでは分かりにくい子に、手順を文字や絵で示す
- 周囲の刺激が気になる子の座席を調整する
- 課題の量や提示方法を工夫する
といった配慮が考えられます。
ただし、実際にどのような支援を受けられるかは、子どもの必要性や学校の体制によって異なります。
見学や相談では、
「通常級でも支援を受けられますか?」
だけではなく、
「一斉指示を聞き逃したときは、どのようにフォローしてもらえますか?」
「書くのに時間がかかる場合、どんな対応ができますか?」
と具体的に聞いたほうが、実際の学校生活が見えてきます。
通常級に在籍しながら「通級」を利用する方法もある
通常級での授業にはおおむね参加できるけれど、一部に特別な指導が必要な子には、「通級による指導」という仕組みがあります。
通級は、通常級に在籍しながら、大部分の授業は通常級で受け、一部の時間に障害による学習上・生活上の困難に応じた特別な指導を受ける方法です。
例えば、コミュニケーションや気持ちのコントロール、学習や生活で困っていることへの対応などを扱います。
通級は、苦手な教科を個別に教えてもらうための補習教室ではありません。
また、実施方法には、
- 在籍している学校で指導を受ける「自校通級」
- 別の学校へ通う「他校通級」
- 担当の先生が学校を巡回する「巡回指導」
などがあります。
どの方法を利用できるかは地域や学校によって異なるので、就学相談や学校見学で確認しておくとよいでしょう。
支援級に入ると、通常級の友達とは離れてしまう?
支援級を考えるとき、勉強と同じくらい気になるのが、友達との関わりではないでしょうか。
「同じ園の友達と一緒に過ごせなくなるのかな」
「休み時間も、支援級の子だけで遊ぶのかな」
支援級に在籍していても、通常級の子どもたちと一緒に活動する機会があります。
これは「交流及び共同学習」と呼ばれるもので、学校では「交流級」「交流学級」などと呼ばれることもあります。
音楽や体育などを通常級で受けることもある
例えば、国語や算数は支援級で学び、音楽や体育、図工などは通常級で一緒に授業を受ける、といった形があります。
学校行事や給食、休み時間などに通常級の友達と一緒に過ごす学校もあります。
ただし、どの教科に参加するか、どのくらいの時間を通常級で過ごすかは、子どもの状況や学校の体制によって異なります。
文部科学省は、特別支援学級に在籍する子どもについて、原則として週の授業時数の半分以上を目安に特別支援学級で授業を行うことを示しています。
教育上の必要性がある場合には、この限りではないとされています。
そのため、
「支援級に在籍して、ほとんどの時間を通常級で過ごす」
という形を、誰でも自由に選べるわけではありません。
見学では、
「どの教科を交流級で受けていますか?」
「交流する教科は、どのように決めていますか?」
と確認すると、実際の時間割が見えてきます。
交流の時間は「参加できるか」も大切
交流する時間が多ければ、それだけでよいとは限りません。
例えば、音楽が好きで、通常級の友達と歌う時間を楽しみにしている子もいるでしょう。
一方で、体育館で大勢の子が動いていると、次に何をすればいいのか分からなくなる子もいます。
どの教科に交流するかだけでなく、
その授業に参加するための支援があるか
も見ておきたいところです。
「交流級には先生が付き添いますか?」
「授業中に困ったときは、誰に声をかければいいですか?」
こうしたことも確認すると、入学後の様子を想像しやすくなります。
支援級と通常級で、将来の進路は変わる?
「支援級に入ると、高校への進学に影響するのでは?」
進路について心配になる保護者も多いと思います。
支援級に在籍したことだけを理由に、高校へ進学できなくなるわけではありません。
ただ、将来の進路には、
- どのような教育課程で学んできたか
- どの程度の学力を身につけているか
- 学校でどのような評価を受けているか
- 希望する学校の入試制度
などが関係します。
例えば、小学校の支援級で学年とは異なる内容を中心に学んでいる場合、中学校ではどんな内容を学んでいくのか。
通常級に在籍していても、授業についていくことが難しい状態が続いているなら、学習内容がどの程度身についているのか。
在籍している学級の名前だけではなく、実際に何を学んでいるかを見ることが大切です。
学校見学や就学相談では、今の学習内容だけでなく、
「中学校へ進むときには、どんな選択肢がありますか?」
と聞いておくのもよいでしょう。
高校入試や成績の扱いなどは、地域や進学先によって異なります。
具体的な進路を考える段階では、学校や教育委員会、希望する進学先の制度を改めて確認する必要があります。
支援級と通常級を選ぶ前に、学校で見ておきたいこと
同じ地域の学校でも、支援級の雰囲気や授業の進め方は違います。
少人数で静かに机に向かっている学校もあれば、複数の学年が同じ教室で、それぞれの課題に取り組んでいる学校もあります。
通常級についても、支援員の配置や授業中の配慮の仕方など、学校によって違いがあります。
パンフレットや説明だけでは分からない部分もあるので、可能であれば実際の教室を見学してみたいところです。
授業中、子どもが分からなくなったらどうする?
一斉指示を聞き取ることが苦手な子なら、通常級でどんなフォローを受けられるのか。
学習内容を理解するのに時間が必要な子なら、支援級ではどのように授業を進めているのか。
子どもが普段困っている場面を具体的に伝えると、学校側も対応を説明しやすくなります。
例えば、
「集中力がないので心配です」
よりも、
「説明を聞いたあと、何から始めればいいのか分からず止まることがあります」
と伝える。
すると、
「黒板に手順を出しています」
「最初だけ個別に声をかけています」
など、実際の対応を聞きやすくなります。
休み時間や行事はどう過ごしている?
授業以外の時間も、子どもにとっては大切な学校生活です。
授業中は先生の説明を聞いて行動できても、休み時間になると何をして遊べばいいのか分からない子もいます。
反対に、授業よりも自由に遊べる時間のほうが生き生きしている子もいるでしょう。
支援級の子どもたちは休み時間をどこで過ごしているのか。
通常級の友達と遊ぶ機会はあるのか。
運動会や遠足などの行事では、どのような形で参加するのか。
こうした場面も見ておくと、「学校での一日」が少しずつ具体的になってきます。
支援級で学ぶ教科と、交流する教科を確認する
支援級を検討しているなら、実際の時間割を見せてもらうと分かりやすいです。
「国語と算数は支援級、体育と音楽は交流級」
と聞いても、学校によって具体的な運用は違います。
交流する教科はどのように決めているのか。
本人の得意なことや希望はどのように考慮されるのか。
交流するときに必要な支援は受けられるのか。
時間割を見ながら説明を聞くと、支援級と通常級の両方で、どんな学び方をするのかが見えてきます。
就学相談では、何を伝えればいい?
支援級と通常級のどちらが合うのか迷ったら、自治体の教育委員会が行う就学相談を利用できます。
就学相談では、子どもの発達や学習の状況、学校生活で必要になりそうな支援などについて、保護者と教育委員会が相談しながら考えていきます。
具体的な進め方は自治体によって異なりますが、面談や学校見学などを通して、必要な支援や学びの場を検討していきます。
発達検査の結果だけで決まるわけではない
「発達検査の数値がこのくらいなら支援級」
というように、ひとつの検査結果だけで機械的に就学先が決まるわけではありません。
例えば、同じような検査結果でも、大人数の中で先生の説明を聞いて活動できる子もいれば、少人数で個別に声をかけてもらったほうが力を出しやすい子もいます。
学習面だけでなく、コミュニケーションや集団生活、必要な支援、本人や保護者の意見なども含めて考えていきます。
文部科学省では、本人・保護者の意見を可能な限り尊重しながら、教育的ニーズや必要な支援について合意形成を図り、障害の状態や専門的な見地なども含めて総合的に検討したうえで、最終的には市町村教育委員会が就学先を決定するとしています。
就学相談では、できないことばかりを伝える必要はありません。
例えば、
「大人数の中では話しかけられないけれど、少人数なら友達と会話できる」
「ひらがなを書くのは苦手だけど、読むことは好き」
「予定が変わると困るけれど、事前に分かれば切り替えられる」
そんな普段の様子も、学校で必要な支援を考えるための大切な情報です。
一度決めたら、ずっと同じ学級?
支援級から通常級へ、通常級から支援級へと、学びの場を見直すことは制度上可能です。
入学時に決めた学級が、卒業まで必ず固定されるわけではありません。
ただし、希望すればすぐ変更できるというものでもありません。
子どもの状況や必要な支援を確認し、学校や教育委員会と相談しながら進めます。
自治体によって相談の時期や手続きも異なるので、就学相談の段階で、
「入学後に学びの場を見直す場合、どのような流れになりますか?」
と聞いておくと分かりやすいでしょう。
入学時には支援級で学んでいた子が、その後通常級での学習を中心にすることもあります。
反対に、通常級で過ごす中で、より個別の指導が必要になることもあります。
入学するときに、その先の6年間をすべて決めるわけではありません。
学びの場は、入学後の様子を見ながら見直していくものでもあります。
まとめ|どちらの教室で、どんな一日を過ごすのか
支援級と通常級には、学習内容や授業の進め方、友達との関わり方などに違いがあります。
でも、
「支援級は少人数だから過ごしやすい」
「通常級なら友達と一緒に成長できる」
と、それだけで決められるものではありません。
友達と一緒に過ごすのが好きな子でも、授業中は個別の説明が必要なことがあります。
反対に、勉強にはついていけても、大人数の中で長く過ごすことに疲れてしまう子もいるでしょう。
学校を見学するときは、教室の広さや人数だけでなく、その子が一日をどう過ごすのかを見てみてください。
国語や算数はどこで学ぶのか。
休み時間は誰と過ごすのか。
通常級と交流する時間はどのくらいあるのか。
授業で分からなくなったときには、どんな助けを受けられるのか。
そうした具体的な学校生活が見えてくると、支援級と通常級の違いも、単なる制度の比較ではなくなってきます。
学校を見学するときには、
「うちの子が、この学校で一日を過ごすとしたら、どんな場面で助けが必要だろう?」
そんなことを思い浮かべながら、教室の様子や先生のお話を見てみてください。


