「今日も授業中に何度か席を立っていました」
学校からそんな話を聞くと、どうしたら落ち着いて授業を受けられるのだろう、と気になりますよね。
先生に注意されると席に戻るけれど、しばらくするとまた立ってしまう。家で「授業中は座っていようね」と話しても、なかなか変わらない。
ただ、同じように席を立っていても、その理由は子どもによって違います。
周りの音や動きが気になる子もいれば、授業で何をすればいいのか分からなくなっている子もいます。長い時間、同じ姿勢でいること自体がつらい場合もあるでしょう。
そして、席に座っていることと、授業に参加できていることは、必ずしも同じではありません。
今回は、授業中に座っていられない子に考えられる理由と、学校で取り入れられる5つの配慮について紹介します。
授業中に座っていられないのはなぜ?
授業中に立ち歩く姿を見ると、つい「集中していないのかな」「授業が嫌なのかな」と考えてしまいます。
でも、席を立つ理由はそれだけではありません。
例えば、こんなことが考えられます。
- 周りの刺激が気になる:窓の外の様子や友達の動き、教室の音などに注意が向いてしまう
- 体を動かしたくなる:じっとしていることが苦手で、無意識に体が動いてしまう
- 座っている姿勢がつらい:椅子や机の高さが合わない、同じ姿勢を保つと疲れる
- 授業の内容が分からない:何をすればいいのか分からず、活動から離れてしまう
- 気持ちが落ち着かない:不安や緊張、疲れなどから、その場にいることが難しくなる
ADHD(注意欠如・多動症)などの発達特性が関係している場合もあります。ただし、席を立つという行動だけでADHDと判断できるわけではありません。
また、同じ子でも、好きな授業では座っていられるのに、別の授業では何度も立ち歩くことがあります。
授業の内容や教室の環境、その日の体調によっても過ごしやすさは変わります。
では、具体的にどんな配慮ができるのでしょうか。
1.周りが気になってしまうなら、座席の位置を工夫する
先生の話を聞いていたはずなのに、廊下を誰かが通るとそちらを向く。窓の外で車が動くと、気になって席を立ってしまう。
こんな場合は、座る場所を変えるだけでも違いが出ることがあります。
例えば、窓や出入り口から離れた席にする、黒板の周りにある掲示物を整理するなどです。
机の周囲が気になる場合には、必要に応じてパーテーションを使う方法もあります。
ただし、前の席や端の席が、どの子にも合うわけではありません。
先生の近くにいると安心できる子もいれば、先生や友達から見られていることが気になり、かえって落ち着かなくなる子もいます。
大切なのは、単に教室の刺激を減らすことではなく、その子が何に気を取られやすいのかに合わせて席を考えることです。
2.何をすればいいか分からないなら、次の行動を伝える
先生が「では、始めましょう」と言ったあと、周りの子はノートを開いて書き始めているのに、一人だけ席を離れてしまう。
もしかすると、授業に参加したくないのではなく、何から始めればいいのか分かっていないのかもしれません。
特に、先生の説明を聞きながら複数の指示を覚えることが苦手な子は、途中で分からなくなってしまう場合があります。
そんなときは、
「ちゃんと座って聞いてね」
よりも、
「教科書の10ページを開こう」
「この問題をノートに書こう」
と、今することを具体的に伝えるほうが分かりやすくなります。
黒板に授業の流れを書いたり、作業の見本を見せたりする方法もあります。
「読む」「書く」「答え合わせをする」と活動が変わるときに、次にすることを短く伝えるだけでも、授業についていきやすくなる子がいます。
3.課題が合っていないなら、授業への参加方法を変える
算数の問題を解いている途中で席を立つ。国語で長い文章を読む時間になると、教室を歩き始める。
特定の活動で離席が増えるなら、課題そのものが負担になっている可能性も考えられます。
例えば、文章を読むことはできても、読んだ内容を理解するのに時間がかかる子がいます。
周りの子が次の問題に進んでいるのに、自分はまだ最初の問題が分からない。そんな状態が続くと、授業に参加することが難しくなってしまいます。
この場合、座るように何度も声をかけるだけでは、困っている部分は解決しません。
先生と相談しながら、問題数を調整したり、最初の一問を一緒に確認したりする工夫が考えられます。
反対に、内容がすでに理解できていて、待つ時間が長いことが負担になる子もいます。その場合は、追加の課題や別の役割を用意する方法もあるでしょう。
同じ離席でも、課題が難しくて困っている場合と、終わってしまって手持ち無沙汰な場合では、必要な対応が違います。
4.じっとしているのがつらいなら、動ける時間をつくる
椅子に座っていても、足をぶらぶらさせたり、体を左右に揺らしたりする。
本人は授業を聞こうとしていても、体を動かさずにいることが難しい場合があります。
こうした子にとっては、45分間ずっと同じ姿勢でいること自体が大きな負担になることもあります。
学校では、あらかじめ体を動かせる機会をつくる方法があります。
例えば、プリントを配る、黒板を消す、教材を運ぶなど、授業の中で短時間立って動ける役割をお願いすることです。
活動の切り替わりに軽く体を伸ばしたり、決めた場所で短い休憩を取ったりする方法もあります。
また、座っている姿勢そのものがつらそうなら、足が床や足台についているか、机と椅子の高さが合っているかも確認したいところです。
手元で何かを触ると落ち着く子もいますが、道具そのものに注意が向く場合もあります。使うときは、本人の様子を見ながら学校と相談していきます。
体を動かすことと、授業を受けることを、必ずしも別々に考えなくてもよいのです。
5.席に戻ったあと、授業に入り直せるようにする
席を立った子に「戻っておいで」と声をかけると、素直に戻って座る。
でも、しばらくするとまた立ってしまう。
そんなとき、席に戻ることはできても、そのあとの授業にうまく入り直せていない場合があります。
例えば、みんながプリントの3問目を解いているところに戻ってきても、本人は何ページの何をしているのか分からない。
周りを見ても分からず、また席を離れてしまう。
こうした場合は、席に戻るよう伝えるだけでなく、今の活動に戻れるように手助けすることが必要です。
「今はプリントのここをやっているよ」
「この一問から始めよう」
と、取り組む場所を指で示すだけでも違います。
先生がそばで最初の問題を一緒に確認すると、そこから自分で進められる子もいます。
座っていた時間だけでなく、席に戻ったあと、もう一度授業に参加できたかにも目を向けたいところです。
家庭から学校に相談するときは、何を伝えればいい?
授業中の様子は、家庭からはなかなか見えません。
「最近、席を立つことが多いです」と聞いても、それだけではどんな配慮が必要なのか考えるのは難しいですよね。
先生と話すときには、離席の回数だけでなく、次のようなことも聞いてみると参考になります。
- どんな授業や活動で席を立つことが多いか
- 立ったあと、どこで何をしているか
- 声をかけると戻れるか
- 席に戻ったあと、授業を再開できているか
- 落ち着いて参加できている授業では、どんな様子か
例えば、「国語の書く時間に離席が多いけれど、先生と一緒に最初の一行を書くと、そのあとは続けられる」という話が聞けたら、必要な配慮も具体的になります。
家庭では、学校から帰ってきた子どもに理由を尋ねても、うまく説明できないことがあるでしょう。
「なんで立っちゃったの?」と聞くより、
「授業で困ったことはあった?」
と聞いたほうが、話しやすいこともあります。
本人が話せることと、先生が見ている様子を合わせることで、教室での過ごし方を考えやすくなります。
配慮を取り入れるときも、本人が嫌がっていないか、実際に授業に参加しやすくなったかを確認しながら調整していきます。
離席が頻繁で授業や学校生活への影響が大きい場合や、急に様子が変わった場合には、担任の先生だけでなく、校内の特別支援教育コーディネーターやスクールカウンセラー、必要に応じて医療機関にも相談できます。
まとめ|席に座ることだけを目標にしない
授業中に座っていられない子への配慮というと、どうすれば長く座れるようになるかを考えがちです。
もちろん、教室で安全に過ごし、必要なときに席に戻れることも大切です。
ただ、席に座っていても授業の内容が分からなかったり、何をすればいいのか迷ったりしていたら、それも困っている状態です。
反対に、一度席を立っても、戻ってから授業に参加できることもあります。
学校から離席の話を聞いたら、「何回立ったか」に加えて、
「席に戻ったあと、授業に参加できているか」
も聞いてみてください。
座ることだけで終わらせず、その先の学びまで見ると、必要な配慮も具体的になってきます。


